HSK六級物語 其の四 語学学校

翌日念のため雲南大学へそのイケメンの彼と偵察に行った。緑がたくさんのキャンパスですがすがしい。驚いたことはとにかくキャンパスが広いこと。僕が通っていた島根大学も相当広いイメージだったがここはその比ではない。今調べてみると敷地面積は400万平方メートル、生徒数約16330人、研究生14811人、教職員2870人。このようなスケールの大学は世界を見てもなかなかないのではなかろうか。とはいえその最高の環境に比例して値段も高くなるわけでやはり僕の手に届かないことに変わりはない。

宿に帰りしばらく途方に暮れていると、「ケンタロー君」と僕を呼ぶ声。見ると見知らぬ年の頃は僕と同じくらいのきれいな女性。どうもイケメンの彼から話が伝わっていたらしく、中国語の学校の事で話があるとの事。赤の他人の僕の事でここまで親身になってくれてありがたきことである。しかしこのホテル、中国の奥地昆明という地にありながら意外に日本人がいることに驚く。話を聞くとどうもこのホテル近辺に大学ではなく語学学校という形で授業料の安い学校があるとのこと。

まじか!?ありがとう!と言うやいなやその足で僕は学校探しに飛び出した。すると歩いて10分くらいのところに学校らしきものを発見。ここが彼女が言っていた学校だろうか?門には華僑補校とある。華僑?華僑といえばかつて社会の時間に習ったことがあるが。たしか「海外に移住した中国人およびその子孫」と定義されているはず。まずその定義に当てはめるなら僕は華僑ではない。ということは僕にはこの学校で学ぶ権利がない、ということだろうか。いやまてよ100年200年はては1000年遡れば実は先祖は中国人であった、という可能性もあるのでは?それならば僕は堂々とこの門をくぐれるわけだが。かつ「補校」という字も気にかかる。補う学校?どういうことか。本校は別にありここはそれを補佐する学校なのだろうか。しばらく門の前で腕組みしながら佇んでいたが、このままでは埒が明かない。意を決して中へ突入した。学期外ということだろうか、誰一人いない。建物がいくつかあるがどの建物へ行けばいいのかさっぱりわからない。

右往左往していると1人の中国人が僕を見つけ中国語で何かを言っているがまったく理解不能。僕はゼスチャーで申し込みをしたいという意思を伝える。すると伝わっただろうか、その中国人がこっちだと言わんばかりに歩き出した。彼の後について歩く。静かな構内にコツーン、コツーンと二人の足音だけが木霊する。

何やら事務所のようなところに到着した。事務所のおばちゃんが中国語でまくしたてた後一枚の紙を僕に渡した。そこには中国語とともに数字が羅列してあり、見た感じ学費や寮費であるらしい事はわかった。とはいえ中国語力ゼロの僕の判断では心もとない。とりあえず誰か中国語のわかる日本人に確認してもらいたい。料金表をもらい後日来るとジェスチャーで伝え学校を後にした。